群馬県 赤城 姫百合駐車場~鍋割山

測定日:2018年11月5日 9:30~15:30 晴れ 南東2~5m

測定地:群馬県前橋市富士見町赤城山 姫百合駐車場~鍋割山

測定方法 地上高5cm を歩行による移動測定、地上高5cm・50cmの定点測定

移動測定 平均空間線量 0.048μSv/h

 原発事故から7年が過ぎ、8年目を迎えようとしています。ここ、群馬県赤城の鍋割山は保育園などの遠足地として人気のある山です。原発事故以降、登山を控えていた保育園でも、2018年には登山を再開したという話も聞きました。もう7年もたったのだから、そろそろ大丈夫だろうという判断のようです。


《 定点測定 》

写真中の0.XXX(50cm高)・0.XXX(地表付近)の単位はμSv/h、空間線量計(HSF)で測定しました。

また、XXXBq/kgは、直下の土壌放射能濃度です。深さ5cmまでの土壌100ccをガンマ放射線モニター AT1320Aで測定しました。

 姫百合駐車場は鍋割山登山のスタート地点、初心者コースとしてよく紹介されます。山頂まで片道2時間程度とありました。

 写真の場所は、百合駐車場の西側、トイレ裏のフェンス際の落ち葉や溜り土から0.23μSv/h以上(地表付近)が計測されました。このフェンス際に雨水が集まるのでしょう。アスファルト舗装面や東側の空間線量は低く、問題ありませんでした。

 駐車場からは二通りの登山口があります。ここは登りのキツイほうの登山口です。登山道の空間線量はおおむね低いようです。たいたい0.05μSv/hくらいです。

 しかし、ところどころ線量が高くなる場所があります。こうした場所は山側斜面からの雨水が集まる場所と思われ、道から外れた山側斜面に入ると、空間線量はさらに高くなります。

 最初の休憩ポイントでした。ここは空間線量はそれほど高くありませんが、土の放射能濃度は思いのほか、高い結果となりました。比較的平らな所で、雨水が集まるのでしょう。土壌サンプルが100ccの簡易的な測定なので、20%前後の誤差があります。しかし、Cs134とCs137の比率はほぼ1:10で、測定の精度は出ています。
 

 荒山風穴のある場所は、比較的平らな岩場です。落ち葉がたくさん堆積していました。空間線量はあまり高くありませんが、土の放射能濃度はかなりのものです。

 2018年10月現在、放射能は福島第一原発事故当時に比べ50%まで減衰していますが、それを空間線量としてとらえると、原発事故当時の30%程度の値になります。つまり、現在では空間線量だけを頼りに放射能汚染を識別するのは難しい状況になっています。

 急峻な登山道からの入口、看板のあるところです。通路もこれまでの登山道よりやや高い値ですが、1メートルほど笹薮に移動するとさらに線量が上がります。

 特に右側のつつじの根本付近の線量は高く、土壌の汚染は5277Bq/kgです。しかし、道の315Bq/kgも低い値ではありません。

 高原の広場の中央は草も刈られ整備されており、その空間線量は問題のない値です。しかし、その周辺の笹薮に入ると、空間線量は高くなります。この広場では中央で休んだほうが安全です。

 

 荒山高原からしばらく歩くと見晴らしのよい登山道になります。突然、0.1μSv/h以上にセットした警報音。かなり高い空間線量です。地表より50cm高のほうが線量が高いので、山側の斜面の線量を測定すると、0.3μSv/h超え、ここは山の雨水が集まる場所のようです。土壌は8000Bq/kg以上が予想され、採取は避けました。

 登山道を外れて、藪などに入るときは注意が必要です。

 火起山山頂の道の空間線量は非常に低く、この山のクールスポットです。周囲の草むらも問題のない線量でした。ここから竈山までは同じような低空間線量が続きます。やはり、山の尾根は放射能がたまりにくいようです。

 

 人面岩から下って、鍋割山山頂に向かう、最も土地が低くなった場所です。いかにも、放射能がたまりそうな場所でしたが、意外なことに、通路も周囲の草むら、林間もそれほど高い空間線量ではありませんでした。写真のポイントがいちばん線量の高い場所です。

 鍋割山の山頂は、水はけの良さそうな岩と砂質の土壌です。空間線量は非常に低く、安心・安全なポイントのようですが、土壌を測定すると200Bq/kgほどありました。砂質の土壌であることや空間線量の低さからすると、意外な数値です。 

 山頂の岩場は周囲を笹薮に囲まれています。この笹薮に入ると空間線量は上がります。ここは岩場と笹薮の境で、遠足に来た子供たちがお弁当を広げそうな場所です。空間線量は極端に高いわけではありませんが、土壌の2352Bq/kgは相当高い汚染で、子供を近づけたくない場所です。


《まとめ》

【空間線量だけでは判断できない】

 原発事故から7年を経た今でも、環境中に放出されたセシウムの50%が残っています。このセシウムは空間線量計では捕えづらくなっており(理論値では、原発事故当時の1/3の数値となる)、環境の汚染度は空間線量とともに、土壌の放射能濃度を併用して総合的に判断する必要があります。

 

【放射能の濃縮ポイントが点在】

 環境中の放射能は全体が一様に減衰するのではなく、減衰する場所と濃縮する場所の差が拡大します。起伏の激しい地形ほどこの傾向は強くなります。鍋割山の登山道全体の空間線量平均は0.046μSv/hと非常に低い値ですが、あちこちに濃縮ポイントが点在していました。


群馬県 その他の測定ポイント

赤城山(大沼・小沼・覚満淵・地蔵岳)、川場村田園プラザ、沼田市民の森 

 

除染基準:群馬県 環境省の除染基準に従う。公園 50cm高 1.00μSv/h