千葉県柏市 県立柏の葉公園

測定日:2019年6月14日 10:40~17:20 晴れ・曇り 南東1~3m

測定地:千葉県柏市柏の葉4丁目1

測定方法 地上高5cm を歩行による移動測定、地上高5cm・50cmの定点測定


移動測定の平均空間線量 0.096μSv/h

原発事故から8年を経て、セシウムはその半減期により45%程度にまで低減しました。しかし、セシウムは風雨により移動するので、雨水が集まり、排水が悪いなどの条件で、逆に濃縮する場所も生まれます。

 

「柏の葉公園」では、そうした場所があちこちに存在していました。45haの広い公園ですから、7時間ほどの調査で通路の一部、主だった広場をざっと測定しただけです。未測定の場所も多くありますので、公園内の空間線量のおおざっぱな傾向としてご覧ください。

 

全歩行測定の平均は0.096μSv/h(5cm高)でした。これは公園の面的な空間線量の平均ではなく、あくまで測定者が歩いたコースの平均です。基本的に、アスファルトや石材、タイルなどの舗装された場所は測定していません。できるだけ土の上や芝生地を歩き、測定しました。なお舗装面の上の空間線量はどこも0.05μSv/h前後でした。

 「冒険のトリデ」や「コミニュティ体育館の広場」など、子どもたちが遊ぶ公園南側のエリアの広場はかなり低い空間線量です。植栽の少ない広場は原発事故後に除染したと思われます。千葉県は「(公園の)植栽、植え込み、森林部の除染はしない」方針だということで、木立や植栽の部分の空間線量はかなり高い場所がありました。

 特に空間線量が高いのは、舗装面と土面や芝生との境です。セシウムはこうした場所に溜まります。また、公園の随所に設けられた排水口付近で高い空間線量を測定しました。 


《 定点測定で見る空間線量》地図中1~21のポイント詳細 

写真1 アスファルト道路とその隣の土面(草地)の空間線量の違いです。セシウムは土壌と結合していつまでも残ります(半減期は約30年)。

写真2 舗装面の縁石に溜まった土が、植込みに積み上げてありました。これを繰り返すとセシウムは濃縮していきます。一般に広いアスファルト舗装の駐車場や石敷きのエントランスなどの縁や角地は要注意です。

写真3 舗装面の角に溜まった土を植込みに積み上げた結果と思われます。ここの土壌の放射能濃度を簡易的に測定しました。結果は7800Bq/kg。あくまで予想値で、20%程度の誤差が考えられます。千葉県と公園を管理する千葉県まちづくり公社は「植栽の除染はしない」方針ということですが、公園管理の過程でセシウムが濃縮した箇所については、なんらかの対策が必要だと思われます。

写真4 排水口を枯葉と土がふさいで、周囲に土が溜まっています。排水口に接続する水路も同じように枯葉や土が溜まって、一部草が生えています。このラインに沿って、高い空間線量を測定しました。排水路の掃除をするだけで、空間線量は低減すると思われます。

写真5 4のポイント同様、ここも排水口です。排水マスに枯葉や土がつまっているかもしれません。木材の土留めがあって、その周囲の土にセシウムが濃縮しています。排水マスの中を掃除するとともに、マスの周囲の土を入れ替えることで空間線量は低減するものと思われます。

写真6 5のポイントと通路をはさんだ向かい側の排水マスです。状況は全く同じです。周囲の土壌にセシウムが濃縮しています。ここの土壌を入れ替えないと空間線量は低減しないと思われます。

写真7 4・5のポイントのそばにある樹木の根本です。排水口と同じような枠に囲まれています。排水口と似た状況です。この近辺は全体が石敷きの通路です。雨水の集まる場所だと考えられます。

写真8 閑静な日本庭園の入口前の通路です。舗装された通路は問題のない空間線量ですが、両脇が土の地面になっています。この土の上で高い空間線量が測定されました。雨水が集まるのかもしれません。苔や竜の髭の生えた土壌にセシウムが溜まっているようです。

写真9 この公園の中で、最も空間線量の低いエリアです。広い芝生広場のどこも低線量です。原発事故後に除染を実施したのなら、その効果は現在もしっかりと維持されています。

写真10 ここも排水口ですが、排水が詰まっている様子はありません。周囲の土にセシウムが溜まっているようです。ここでも簡易的に土壌の放射能濃度を測定しました。その結果は、22,300Bq/kg。20%程度の誤差が考えられますが、その誤差を考えても、放射性物質汚染対処特措法に基づく指定基準の8,000Bq/kgを大きく超える放射能濃度です。ここの空間線量を下げるには、排水マス周辺を中心にして通路に沿った表層の土壌を入れ替えるしか方法はありません。空間線量は千葉県の公園除染基準1m高0.23μSv/h以下ですが、原発事故から8年を過ぎた現在、放射能汚染は空間線量の値だけでは捉えづらくなっています。

写真11 比較的広いアスファルト通路が交差する角の土の地面。ここに雨水が流れ込み、セシウムが溜まったものと思われます。排水路がなく、植栽に雨水を吸わせるような場所は、注意が必要です。

写真12 水路沿いの舗装道路わきに溜まった土です。こうした場所もセシウムが溜まる傾向があります。通路の真ん中を歩けば問題ありませんが、子どもは好んで道路の端を歩いたりするものです。

写真13 広い芝生広場のどこも低線量です。ただし、外周部の通路付近は、空間線量が高くなります。よって、広場の内側で過ごすほうがより安全です。

写真14 ここも排水口です。さらに、広い舗装面に面した植込みなので、セシウムが溜まる要素が揃っています。

写真15 子どもの遊び場は低い線量です。コミュニティ体育館の周囲の広場は、どこも低い線量です。

ただし体育館北側の植栽の線量は高めです。

写真16・17 ともに冒険のトリデです。16は最も空間線量の高いポイント。子どもが普通に遊ぶエリアは17と同じでどこも低い線量です。ここに来る途中の通路に気を付ける、たとえば舗装通路の真ん中を歩いてくれば問題ありません。

写真18 ゆるい坂の下で、雨水が流れ込み、セシウムのたまる場所です。密植した植木の中には測定器が入りませんから、こうして土が覗いた部分を測定して、全体を推測するしかありません。

写真19 2014年に「子どもを放射能からまもる会in千葉」が測定した柏の葉公園のデータを参考にして発見したホットスポットです。5年前の測定ですが、現在も高い空間線量です。周囲の舗装面の雨水が植込みに流れ込み、セシウムが溜まったものと考えられます。ここの簡易土壌測定の結果は、15,600Bq/kgです。20%程度の誤差を考慮しても、特措法の指定基準8,000Bq/kgを軽く超えています。ここの空間線量を下げるためには、やはり植込みの土壌を入れ替えるしかありません。

写真20・21 ともにほぼ同じ場所です。第1駐車場に新しくできたトイレの裏の三角の芝生地です。この芝生地は中央を除き外周部の空間線量が高めです。きれいに芝が刈られているだけに残念です。


《まとめ》

 ①セシウム濃縮ポイントに注意

通路や舗装面の端の芝生地や植栽部分の空間線量は高く、セシウムが濃縮した場所が多数ある。特に、排水口周囲の土壌はその傾向がはなはだしい。

 

②子どもの遊ぶ広場は問題なし

植栽の少ない広場の空間線量は低い。特に子どもの遊び場は、広場の内側で遊ぶかぎり問題のない線量だった。

 

③「自然に親しむ、土に親しむ」という目的には不向き

 千葉県と公園を管理する千葉県まちづくり公社は「(公園内の)植栽、植え込み、森林部の除染はしない」という方針だという。したがって、この公園の緑地(広場の芝生を除く)には、原発事故による汚染がそのまま残されている可能性があり、「自然に親しむ、土に親しむ」という目的には不向きだと考えられる。


千葉県 その他の測定ポイント

 

千葉県の除染基準:公園 1m高 0.23μSv/h

柏市の除染基準:公園 50cm高 0.23μSv/h 小学校・保育園 5cm高 0.23μSv/h

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コメント: 2
  • #1

    堀内泉 (土曜日, 22 6月 2019 06:20)

    初めて拝見させていただきました。
    私は長野県民ですが、
    興味があって、しっかり読ませて頂きました。
    すごくしっかり調べてあってとても参考になりました。
    子供たちがこの公園で遊んでいる姿が目に浮かび、
    心配になりました。
    これからもまた教えてください。力になれることがあれば良いなぁと思っています。

  • #2

    管理者(小泉) (土曜日, 22 6月 2019 11:47)

    コメントありがとうございます。

    今回は、千葉在住の女性から柏の葉公園の現状の問い合わせがあって測定をしました。原発事故から8年を経て、放射能問題への関心は薄れつつありますが、フクイチから196.6kmも離れた柏市の人口密集地に、いまだこれだけの汚染が残っていることに、改めて驚きました。

    なお、現在、この地域で公園や学校のホットスポットを探索し、自治体と除染交渉を行っている30代の青年がいます。彼の地道な活動はほとんど知られていませんが、関係自治体を動かし、地域の放射能汚染低減に貢献しています。今回は、彼からのアドバイスも受けて測定しました。